叔父の墓じまいについて、これまで2回にわたってお話ししてきました。親族7人がかりの体験談と流れや費用のお話です。
今回はその少し前にさかのぼります。墓じまいの前にもっと大きな手続きがありました。相続です。
叔父に遺言書はありませんでした。
「遺言書がないと大変」「相続で揉める」。終活の本やネットにはよくそう書いてあります。
ですが、今回はまったく揉めませんでした。費用約150万円、期間約1年半の記録です。
遺言書はありませんでした
叔父が亡くなったあと、親族はまず遺言書を探しました。墓じまいのお話でも触れましたが、納骨を後ろ倒しにしてでも遺言書の確認と遺品整理を優先したのです。
探したのは家の中だけではありません。従兄弟が公証役場と法務局に出向いて遺言書が残されていないかを確認してくれました。
- 公証役場では、公正証書遺言が作られていないかを検索できます(遺言検索)
- 法務局には、自筆の遺言書を預けられる制度があります(自筆証書遺言書保管制度)
結果はどちらも「保管なし」。証明書も発行してもらえるので、私たちも見せてもらいました。家の中からもそれらしい書き置きは見つかりませんでした。
こうして「遺言書はない」とはっきりさせたうえで、相続の手続きが始まりました。あとから遺言書が出てくると手続きがやり直しになりかねないからです。
相続人は7人
叔父には配偶者も子どももいませんでした。そう、叔父もまた「おひとりさま」だったのです。
両親もすでに他界しています。
その場合、相続人は兄弟姉妹へ、亡くなっている兄弟姉妹の分はその子ども(甥・姪)へと広がっていきます。叔父の場合、私の従兄弟たちも含めて7人でした。
7人。この数字だけで経験のある方は「ああ……」と思われるかもしれません。書類が7人分…謄本も実印も印鑑証明も7人分です。
手続きは司法書士に丸ごとお任せ
この相続の手続きを、私たち7人は自力ではやりませんでした。司法書士に丸ごとお任せしたのです。
探したというよりご縁でした。葬儀屋さんが紹介してくれた事務所にそのままお願いしました。相見積もりも取っていません。
しゅんあのときは、相見積もりって発想すらなかったな



うん、もっと簡単に終わると思ってたし
結果的にはこれでよかったと思っています。
戸籍集めも司法書士にお任せしました。相続人を確定するには叔父の出生までさかのぼって戸籍をそろえる必要があるのですが、それもぜんぶです。「実はほかにも相続人がいた」という想定外もなく、7人で確定。遺産分割協議書への署名捺印(いわゆるハンコ集め)も拍子抜けするほどスムーズでした。
費用は約150万円
結果として司法書士への支払いは総額で約150万円でした。
内訳のわかる記録として手元に残っているのは、最初にいただいた見積書です。
- 司法書士への業務委託料:約110万円
- 戸籍取得費・登録免許税などの実費:約25万円
見積もりの合計は約135万円でしたから、実際にはそこから15万円ほど増えたことになります。



車が買えそうな金額だよな



ホントよね
高いと感じた方も多いと思います。正直、私も最初は驚きました。
ただこれは登記だけの金額ではありません。戸籍集めから協議書の作成、預貯金の解約といった遺産整理まで丸ごとお任せした金額です。もし7人が手分けして平日に役所と銀行と法務局を回り、書類を郵送し合い、不備があればやり直し……と考えると「手間をお金で解決した」ことになります。
まとまったお金が要る場面では立て替えのできる数人がその都度立て替えてくれて、その場をしのぎました。私は立て替えられる状況ではなかったので本当に助かりました。
私にできるのは自分が動くことくらいで、それ自体は苦ではありませんでした。ただ私だけが動くと遠方の親族が気にしますし、そのたびに7人で相談するのも大変です。「なんでも専門家に一任する」は、事情がばらばらの7人にとっていちばん角の立たない落としどころだったのだと思います。
専門家への費用はこれだけではなく、司法書士事務所の系列の税理士にもお世話になりました。報酬は約120万円。誰も知らなかった貸金庫が出てきたりして、さまざまな確認に時間を取られました。
期間は約1年6ヶ月
依頼から手続きの完了まで約1年半かかりました。
「どの工程に時間がかかったの?」と聞かれると答えに困ります。どこか一ヶ所ではなく、ぜんぶに満遍なく時間がかかったからです。書類が行っては戻り、そろっては次を待ち。気がついたら1年半という感覚でした。
急ぎの事情がなければ相続とはそういうものだと構えておくのがよさそうです。
揉めなかった理由
遺言書がなかった結果の「150万円と1年半」でしたが、誰ひとり「遺言書さえあれば(もっと早く楽に終わったのに)ねぇ」とは言いませんでした。



もし遺言書があったら、『お寺に全額寄付』って書いてあった気がする…



私もそんな気がする…
叔父の人柄を知る親族一同はみんな同じことを考えていたようでした。
そしてもうひとつ。誰も「少しでも多く」と言いませんでした。みんな叔父の遺産を「ふってわいたもの、もともとなかったもの」と考えていたからです。もともとなかったものだから減っても揉めない。手間がかかるくらいならお金で解決する。
それから叔父は子ども好きで、私たち甥や姪をとても可愛がってくれました。それも揉めなかった要因のひとつだと思います。
今回揉めなかったのはこうしたことが重なったからだと思います。そしてこれはたまたまです。相続人の顔ぶれ、それぞれの事情、金額。どれかが違えばどうなっていたかわかりません。
遺言書がなかった理由
叔父はきっと、あのとき自分が亡くなるとは夢にも思っていなかったのだと思います。
流行病のダブルパンチでした。自宅で倒れているのが見つかったとき、部屋にはオイルヒーターがついたままだったそうです。遺品整理のとき、お風呂場には洗濯物が干したままになっていて切なくなりました。
それだけではありません。叔父は古くなった家の水回りをまとめて修理しようと、工務店に見積もりを取っていました。その金額は今回の司法書士の見積もりよりも高いもの。それを払うつもりでいたのですから、叔父はこの家でまだまだ暮らしていくつもりだったのです。
叔父の性格なら、病気などで死期を感じていれば遺言書を残していたと思います。遺言書がなかったのは用意が悪かったからではなく、「まさか」だったから。ただそれだけのことなのでした。
私の場合
私は遺言書を作ろうと思いました。今回は遺言書がなくても揉めませんでしたが、あるに越したことはないと感じたからです。理由はふたつあります。
ひとつは150万円と1年半を間近で見たから。遺言書があればこの費用と期間がゼロになったというわけではありません。それでも、戸籍をさかのぼって相続人を探すところから始める手続きと「遺言書のとおりに進める」手続きでは、残された人の負担がまるで違います。
私の場合、この手続きをするのは子どもたちです。叔父のときのように相続人探しで迷うことはないはずですが、それでも少しでも身軽にしておいてあげたいと思いました。



順番でいえば、次はいよいよ私たちの番よね



いよいよて(笑)終活の成果を発揮するときだな
もうひとつは、エンディングノートを書いてみてわかったことがあるから。ノートには法的な効力がありません。財産をどうするかを効力のある形で残せるのは遺言書だけです。
思いはエンディングノートに、財産のことは遺言書に。両方そろってようやく安心できる気がしています。
それに叔父が身をもって教えてくれました。「まさか」は前触れなくやってきます。遺言書は元気なうちにしか作れません。
というわけで、私の終活リストに「遺言書を作る」が正式に加わりました。公正証書遺言とはなにか。弟が市役所の出張所でもらってきた「遺言のしおり」(エンディングノートの隣に置いてあったそうです)を片手に、これからゆっくり調べていくつもりです。
おわりに 〜まさかが来る前に
叔父に遺言書はありませんでした。それでも7人の相続は揉めることなく、約150万円と1年半で静かに終わりました。
「ふってわいたもの」と思える顔ぶれだったこと。手間をお金で解決できたこと。そしてみんなが、叔父のことを好きだったこと。振り返るとこの3つに恵まれた相続だったと思います。
だからこそ、次は自分の番です。思いはエンディングノートに、財産のことは遺言書に。「まさか」が来る前に、焦らず、放置せず、進めていくつもりです。
叔父のお話は、墓じまい編と遺品整理編もあわせてどうぞ。








