自筆証書遺言と公正証書遺言の違い。おひとりさまが3つをくらべました

叔父が亡くなったあと、相続の手続きが終わるまでに1年半かかりました。
遺言書はありませんでした。
そのあとつい最近になって、弟のしゅんが「公正証書 遺言のしおり」というものをもらってきました。
では、私自身はどうするのか。
自分の手で書くのか、公証役場で作ってもらうのか。
60代おひとりさまの目線でくらべてみました。

ひより

ねぇしゅん、遺言書って自分で書くのと公証役場と、どっちがいいと思う?

しゅん

急に?笑

ひより

叔父さんのことがあってから、結構気になってるのよね。

しゅん

まぁ確かにな。

目次

遺言書の種類は3つ

遺言書には、書き方が3つあります。
どれで書いても、遺言書としての効力は同じです。
違うのは、つくるときの手間と、亡くなったあとに起きることです。

自筆証書遺言

自分の手で書く遺言書です。
紙とペンと印鑑があれば、その日のうちに書けます。
費用もかかりません。
そのかわり、決まりを守れているかどうかを見てくれる人がいません。
書いたあとにどこへ置くかを自分で決めます。
自宅に置いておくか、法務局に預けるかです。
どちらにするかで、亡くなったあとに起きることが変わります。

公正証書遺言

公証役場でつくってもらう遺言書です。
公証人は、法務大臣に任命された法律の専門家です。
渡したい相手と財産を伝えると、公証人が法律に沿った文章にまとめてくれます。
証人2人に立ち会ってもらい、できあがった原本は公証役場に残ります。
財産の額に応じた手数料がかかります。

秘密証書遺言

中身を誰にも見せないまま、封をして持ち込む遺言書です。
日本公証人連合会は、秘密証書遺言について「自筆証書遺言と異なり、自書である必要はない」としています。
署名さえ自分ですれば、パソコンで作っても、誰かに書いてもらってもよいのです。
公証役場で、公証人1人と証人2人の前に封筒のまま出して、これは自分の遺言書ですと申し述べます。
公証人が封筒の紙に日付を書き、遺言者と証人2人がそこに署名して押印します。
証明されるのは、その日にその人の遺言書が確かにあったということだけです。
中身は公証人も見ません。
手数料は定額で13,000円です(公証人手数料令28条)。

ただ、その日本公証人連合会が、秘密証書遺言のリスクを3つ挙げています。

  • 公証人が中身を見ないので、法律的な不備があったり無効になったりすることがある
  • 自分で保管するので、なくしたり、見つけた人に破棄や改ざんをされたりすることがある
  • 法務局の保管制度が使えないので、亡くなったあとに家庭裁判所の検認が必要になる

検認というのは、亡くなったあとに遺言書を家庭裁判所へ持っていって、その日の遺言書がどんな状態だったかを記録してもらう手続きです。

法務局に預ける道も、はじめから閉じています。
遺言書保管法が預かると決めているのは民法968条の自筆証書遺言で、しかも封をしていないものだけだからです。

病気やけがで、それどころではないときは

ここまでの3つは、体調が落ち着いているときに使う書き方です。
民法には、そうしていられないときのための書き方もあります。
死期が迫っているときは、証人3人以上に立ち会ってもらい、そのうちの1人に遺言の内容を口で伝えます。
聞き取った人がそれを書き取り、遺言者と残りの証人に読み聞かせて、証人全員が署名して押印します(民法976条)。
そのうえで20日以内に家庭裁判所に確認してもらわないと、効力が出ません。
そして、普通の書き方ができる状態に戻ってから6か月生きていると、この遺言は効力を失います(民法983条)。
元気なうちに使う書き方ではない、ということです。

くらべるのはこの3つ

実際に選ぶことになるのは、自筆証書遺言と公正証書遺言です。
自筆証書遺言は置き場所で2つに分かれるので、くらべるのはこの3つになります。

  • 自筆証書遺言を、自分で保管する
  • 自筆証書遺言を、法務局に預ける
  • 公正証書遺言をつくる

遺言書を選ぶときに見る5つのこと

3つのうちどれを選ぶかは、どこを見るかで変わります。
私が見ることにしたのは、次の5つです。

① 費用
いくらかかるか。
自分が作るときに払うお金と、亡くなったあとに手続きをする人が払うお金は、別にかかります。

② 手間
書き上げて、置き場所を決めるまでに、どこへ何回行くか。
その日のうちに終わるものと、何度かやりとりが要るものがあります。

③ 証人
公正証書遺言には、証人が2人必要でした。
しかも誰でもなれるわけではないので、頼める人がいるかどうかで選べるものが変わります。

④ 無効にならないか
決まりを外していないかどうかを、誰が見てくれるか。
自分ひとりで書くと、間違えたことに気づかないままの可能性があります。

⑤ 見つけてもらえるか
亡くなったあとに、その遺言書にたどり着いてもらえるか。
書いてあっても気づかれなければ、なかったのと同じことになります。

はじめの4つは、作るときに自分で確かめられます。
最後の1つだけは、自分がいなくなったあとに起きることです。
決まりや数字を調べても、そのとおりになったかどうかは確かめられません。

自筆証書遺言と公正証書遺言を一覧で比較

3つの違いを、作るときと、亡くなったあとに分けて並べました。

作るとき

スクロールできます
自筆・自分で保管自筆・法務局に預ける公正証書
書く人自分自分公証人
守る決まり民法の決まり民法の決まりと用紙の決まり公証人が整える
決まりを見る人いない法務局(形が合っているかだけ)公証人
証人不要不要2人必要
出向く先なし法務局(代理も郵送もできない)公証役場(公証人に来てもらうことや、ウェブ会議※1で作ることもできる)
費用かからない3,900円16,000円から※2(財産の額で変わる)
書き直しいつでもできる(費用はかからない)いつでもできる(もう一度3,900円)いつでもできる(もう一度手数料がかかる)

※1 ウェブ会議で作れるのは、公証人がその方法でよいと認めた場合です。2025年10月から選べるようになりました。
※2 財産の額がいちばん低い枠(50万円以下)の手数料3,000円に、遺言のときだけ乗る13,000円(遺言加算)を合わせた額です。

自筆で書くときの民法の決まりと、法務局に預けるまでの手続きは、別のお話にまとめています。

亡くなったあと

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自筆・自分で保管自筆・法務局に預ける公正証書
知らせる仕組みない申し出ておけば3人までに通知が届くない
探して見つける方法家の中を探してもらう全国どこの法務局でも照会できる全国どこの公証役場でも照会できる
検認必要不要不要
使うためにすること家庭裁判所に検認を申し立てる遺言書情報証明書※3の交付を受ける手元の正本※4を使う
費用800円と郵便切手、検認済証明書150円1通1,400円正本があればかからない

※3 法務局に預けた遺言書の内容を証明する書類です。相続の手続きでは、遺言書のかわりにこれを使います。
※4 公正証書遺言を作ったときに受け取る写しです。原本と同じ効力を持ちます。

3つの違いは、この2枚の表に並べたとおりです。
ただ、費用と、証人と、見つけてもらえるかどうかは、1行では足りません。

費用は合計するといくら違うか

作るときの表に書いた16,000円は、財産の額がいちばん低いときの数字です。
額が上がれば手数料も上がり、渡す相手ごとに計算して足していきます。
このほかに、できあがった正本と、控えの謄本を受け取る分が、書面1枚につき300円かかります。
公証人に来てもらう場合は、手数料が1.5倍になり、日当と交通費が加わります。

手数料の一覧表と、2人に分けて遺す場合の計算例は、別のお話にまとめています。

合計を出すために、その計算例で出した金額を使います。300万円ずつ2人に遺す場合で、41,400円です。

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自筆・自分で保管自筆・法務局に預ける公正証書
作るときかからない3,900円41,400円
亡くなったあと950円と郵便切手1,400円正本があればかからない
合計950円と郵便切手5,300円41,400円
遺言書を使うために集める戸籍出生から死亡までの全戸籍と相続人全員の戸籍出生から死亡までの全戸籍と相続人全員の戸籍不要

戸籍は1通450円です。何通になるかは人によって変わるので、合計には入れていません。
このほかに、不動産の名義を変えるといった手続きそのもので必要になる書類は、別にあります。

作るときの費用だけを見ると、自分で保管する自筆証書遺言がいちばん安いです。
亡くなったあとを足しても、順番は変わりません。

表だけではわからない2つのこと

表では1行で書きましたが、その1行に収まらなかったことが2つあります。
証人と、見つけてもらえるかどうかです。

証人2人を誰に頼むか

証人が要るのは公正証書遺言だけです。自筆証書遺言には要りません。

証人には、なれない人が民法で決まっています。
財産を渡す相手と、その配偶者や親子孫はなれません。未成年者もなれません。

なれるかどうかは、頼む前にわかります。
証人になる人の氏名と住所と生年月日を、あらかじめ公証役場に伝えるからです。
日本公証人連合会も、この3つを書いたメモを用意しておくよう案内しています。
伝えた時点で、その人が証人になれるかどうかが確かめられます。

頼める人が見つからないときは、公証役場で紹介してもらえます。
日本公証人連合会は、適当な証人が見当たらない場合は遠慮なく申し出てほしいと案内しています。
紹介してもらうときの謝礼と、頼める相手の探し方は、公正証書遺言のお話に書いています。

ひより

2人探すのって大変じゃない?

しゅん

だねぇ。

ひより

その上、中身を見られてもいい人って。

しゅん

ハードル高いよな。

亡くなったあとに見つけてもらえるか

5つのうち最後に置いた、見つけてもらえるかどうかです。

自宅に置いた遺言書は、誰かが家の中で見つけるまで、あることがわかりません。

法務局に預けると、預けるときに申し出ておけば、亡くなったあとに3人までへ通知が届きます。

通知がなくても、相続人などのほうから調べることはできます。
法務局に預けてあるかどうかは、全国どこの法務局でも照会できます。
公正証書遺言があるかどうかは、全国どこの公証役場でも照会できます。
自宅に置いた遺言書には、その窓口がないため、家の中を探すしかありません。

遺言書があるかどうかを調べる方法は、別のお話にまとめています。

2026年の改正で今書いた遺言書はどうなるか

2026年6月17日に、民法などを改正する法律が成立しました。令和8年法律第45号といいます。
6月24日に公布されましたが、まだ施行されていません。

今の決まりで書いた遺言書は、そのまま有効です。
これから変わるのは、押印が要るかどうかと、法務局でできることの2つです。

押印が任意になる(公布から1年以内)
押さなくてもよくなるということで、押してはいけなくなるのではありません。
対象は、自筆証書遺言と、秘密証書遺言と、特別方式の遺言です。訂正するときの押印も要らなくなります。
公正証書遺言は入っていません。こちらの押印は、2023年の公証人法改正でもう廃止されています。

法務局でできることが増える(公布から3年以内)
保管証書遺言という形ができます。パソコンなどで作った遺言を法務局に提供して、本人が全文を口述して預ける形です。検認は要りません。
今ある保管制度も変わります。オンラインでの申請と、ウェブ会議での手続きができるようになります。表に書いた「代理も郵送もできない」は、いずれ変わります。

もう1つ、証人になれない人の範囲が広がります。
財産を遺す相手が施設などの法人なら、そこで働く職員や役員は証人になれなくなります。

施行の日は、どちらもまだ決まっていません。1年以内、3年以内という約束だけがあります。

遺言書は、何度でも書き直せます。
法務局に預けたものも、書き直して預け直せます。
今の自分で一度作っておいて、決まりが変わったら作り直すことができるのです。

ひより

遺言書、パソコンで作れるようになるんですって。

しゅん

いつから?

ひより

3年以内らしいわよ。

しゅん

まぁまぁあるな…

おひとりさまの私はどちらを選ぶか

ここまでくらべてきて、私はまだ決めていません。
今のところ、自筆でも公正証書でも、どちらでもいいと思っています。

ただ、3つを並べたことで、はっきりしたことがあります。

  • 法務局に預けて申し出ておけば、指定した3人までに通知が届く
  • 公正証書なら、相続人などが全国どこの公証役場でも照会できる

どちらにも、たどり着く道があります。

たどり着く道がないのは、書いたものを家に置いたままにしたときだけです。

せっかくつくるのだから、誰かに伝わるようにしたいと思いました。

ひより

結局、どっちでもいいって結論になったわ。

しゅん

それ、結論なの?

ひより

置き場所の方が大事だと思うの。

しゅん

なるほどね。まあ、焦らず、放置せず決めればいいさ。

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この記事を書いた人

60代おひとりさま。10年前に夫と死別。お墓のないおひとりさまの私が弟と一緒に本気の終活はじめました。6匹の猫と暮らしています。

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